2022年11月17日(木)に長崎県立佐世保西高等学校が弊社にご来社され、遷移金属による釉薬着色の実験の実習をいたしました。
この実習は、佐世保西校様の理系課題研究のフィールドワークの一環です。今回は9名の生徒さんが参加されました。
この実習で理科に関する企業に行かれるそうですが、その中で現在化学に関する企業が無いためご依頼いただきました。
Table of Contents
実習内容
今回の実習では下記の9つの項目をお話しさせていただいた上で、工場見学と実習をさせていただきました。
01.有田焼の製造工程
02.呉須の基礎知識
03.呉須の製造工程
04.釉薬の基礎知識
05.釉薬の製造工程
06.釉薬製造の難点
07.ゼーゲル式を用いた釉薬の調合
08. SDGsの取組
09. 釉薬の科学
10.遷移金属による釉薬着色の実験
実習は下記の内容です。
実習目的
天草生地のテストピースに対し、異なる金属を含んだ釉薬を浸し、各色の違いを体験していただきます。
実習のための準備物
実習を行うに当たって下記の物を揃えました。
・天草生地…120個(2種類の焼成方法×6種類の着色用金属×5種類の添加量×2つのピース)
・釉薬原料(石灰釉・Cr・Mn・Fe・Co・Ni・Cu)
Cr | Mn | Fe | Co | Ni | Cu | ||||||
0.2% | 0.04g | 2.0% | 0.4g | 1.0% | 0.2g | 0.2% | 0.04g | 0.2% | 0.04g | 0.5% | 0.1g |
0.6% | 0.12g | 5.0% | 1.0g | 3.0% | 0.6g | 0.6% | 0.12g | 0.6% | 0.12g | 1.0% | 0.2g |
1.0% | 0.2g | 8.0% | 1.6g | 5.0% | 1.0g | 1.0% | 0.2g | 1.0% | 0.2g | 1.5% | 0.3g |
3.0% | 0.6g | 12.0% | 2.4g | 10.0% | 2.0g | 3.0% | 0.6g | 3.0% | 0.6g | 2.0% | 0.4g |
5.0% | 1.0g | 15.0% | 3.0g | 5.0% | 1.0g | 2.5% | 0.5g |
・呉須
・絵付け用筆…2本
・スケール…3台
・乳鉢・乳棒…4個
・薬さじ…3本
・薬包紙…5枚
・袋(小)…50枚
・20mlメスシリンダー…2個
・釉薬入れ用プラボックス…4個
・廃液入れ用バケツ…2個
・雑巾…4枚
実習手順
実習の手順は下記の様に行いました。
①天草生地に何の釉薬を浸すか記入する。
②石灰釉の粉と金属の粉をスケールで計量し小袋に入れる。
③20mlメスシリンダーで水を18ml計量する。
④計量された金属+石灰釉の粉と水を乳鉢に入れて、乳棒で擦る。
⑤4つの生地(ピース)に3秒ずつ浸ける。
⑥釉薬を乾燥させる。
⑦釉薬が基準線より下まで付いてしまっている場合は、削り落とす。
⑧後日焼成する。(上:酸化焼成(OF)、下:還元焼成(RF))
感想
日常で目に触れる焼物がとても繊細な作業で作られているということに非常に驚かれておられました。
一部をご紹介いたします。
・焼き物と化学にこれほど深い関係があるということがとても意外でした。金属の配合、焼き方、酸化・還元など、様々なものが複雑に絡み合い、一枚の焼き物がつくられていると知り、自分自身の焼き物に対する考え方が大きく変わりました。深海さんのように、化学の力を応用して新たなものをつくってみたいと思うようになりました。フィールドワークを通して、化学や焼き物の可能性を感じることができました。
・ある物質をわずかに入れるかどうかで色に大きな違いが出ることを初めて知り、とても驚きました。有田焼をつくる工程にたくさんの化学反応がかかわっていることがわかり、日常で食器など使う際には、どのように作られ、どんな物質が使われているかを考えてみたいと思いました。
・周期表など、普段の生活では使わないと思っていたことが実習で出てきて、覚えた知識が実用され、授業の大切さに気付きました。体験も楽しく、色の変化にとても興味を持ちました。
・私は、呉須や釉薬について以前は全く知識がなく、存在すら知らなかったのですが、今回のフィールドワークを通して、製造においての難しさや呉須の魅力を感じました。着色においても、様々な物質の化学反応を利用して、細かな濃淡を作り出しているところがとても難しいと思いました。お忙しい中、貴重な体験をさせていただきありがとうございました。
少しでも高校生の皆様にとって、化学の面白さをお伝えできたり、知的好奇心を満たす時間になれていれば幸いです。